「どういう治療をするの?」

うちの次女が生後1ヶ月で「先天性股関節脱臼(発育性股関節形成不全)」と診断されてから、
6歳までに受けた治療、手術のことを時系列でまとめました。
症状の重さや病院の治療方針によって、どこまでの治療をするかは違います。

 

1.発見

3~4ヶ月健診で股関節の診察があり、その時に発見される場合が多いようです。

「脚が大きく開かない」
「脚の付け根がコキコキと音がする」
「脚を広げるときにカクッとした感触がある」

このような症状があれば股関節脱臼の可能性があると診断されます。
診断された場合、すぐに股関節の専門医のいる小児整形外科を受診しましょう。

ただし、健診は整形外科医ではなく小児科医が担当するので、見逃されてしまうことも。
赤ちゃんの足で気になる事がある場合、健診で指摘されなくても小児整形外科を受診するようにしましょう。

うちの次女の場合は、生まれたときから足の開きが悪く、左膝が完全に立った状態でした。

脱臼の足

完全脱臼した足。左膝が完全に立っていて、正常な右足とはだいぶ違う

「普通の赤ちゃんと足がちがうな」と思ったら、3~4ヶ月健診を待たずに小児整形外科に相談するのをおすすめします。

先天性股関節脱臼の治療は、早ければ早いほどよいと言われています。

 

2.リーメンビューゲル

この写真のような治療装具です。

リーメンビューゲル

リーメンビューゲル

脚をM字に開脚させ、膝の重みを利用した「テコの原理」で大腿骨頭を骨盤内の正しい位置に動かしていく治療法です。

生後1~6ヶ月ごろにリーメンビューゲルでの治療を始めます。

生後6ヶ月までに治療を始めた場合、80~85%の子がリーメンビューゲルで治すことができると言われています。

テコの原理を利用しているだけなので、危険もなく安全な治療方法です。

リーメンビューゲルで整復できる脱臼は、3日~2週間程度で骨が正しい位置に動くそうです。

一回の装着で整復できず何度かチャレンジする場合、様子を見ながら
「2週間つけたらはずし、しばらく休んでからまた2週間つける」
というようにします。

リーメンビューゲルは膝をM字に開くことで効果が出ます。
布団に寝ているときやベビーカーに乗せるときも、足がしっかりと開くようにしてあげましょう。

うちの子は、生後2ヶ月~6ヶ月の間、休みながらリーメンビューゲルの治療をしました。

 

3.牽引治療

リーメンビューゲルで治らない場合、入院して牽引治療をします。
牽引治療には、「水平牽引」「オーバーヘッド・トラクション」などがあります。

うちの子は、生後7ヶ月で牽引→手術をしました。

・水平牽引

ひものついたベストを着て、ベッドに固定します。脚に片足1kg~のおもりを両足につけ、ベッドに対して水平に脚を引っ張ります。

水平牽引。両足に1kgずつのおもりをつけている。足の間にあるのはずり落ちないためのおもり

水平牽引。両足に1kgずつのおもりをつけている。足の間にあるのはずり落ちないためのおもり

・オーバーヘッド・トラクション

「オーバーヘッド・トラクション」では「脚あげ腹筋」のようにまっすぐ脚を上げた状態から、頭の方に脚を傾け、さらに少しずつ脚を開脚していきます。垂直牽引、ななめ牽引とも言うそうです。

うちの娘は水平牽引だけでオーバーヘッドはしなかったので、写真はありません(すいません……)
知りたい方は「オーバーヘッド+股関節脱臼」「垂直牽引+股関節脱臼」のキーワードで画像検索してみてください。
(もし、写真をご提供くださる方がいらっしゃったら、ぜひご連絡ください)

水平牽引で股関節をやわらかくし、続くオーバーヘッドで自然に大腿骨頭が正しい位置にはまるのを目指します。

 

4.徒手整復

牽引治療で治らなかった場合、頃合いをみて手で大腿骨を股関節にはめるのを「徒手整復」といいます。
全身麻酔で体の力が抜けている状態の時に、医師の手ではめ込みます。

 

5.観血手術

「血を観る手術」ということで「観血手術」

要するに、メスや内視鏡を使用する手術で、出血をともないます。

脱臼がひどかったり、大腿骨と臼蓋の間にじゃまな組織(介在物)が挟まっている場合は、牽引や徒手でははめることができません。

手術で介在物を取り除き、正しい位置に大腿骨をはめ込みます。

うちの子も大腿骨と臼蓋の間に介在物があったので、内視鏡による手術の後、徒手整復をしました。

手術の前には、睡眠薬で赤ちゃんを眠らせ、造影剤を入れてMRIの検査がありました。

 

6.ギプス・装具

牽引、徒手整復、観血手術で股関節を正しい位置にはめた後は、数週間~1ヶ月程度ギプスで固定。

ギプスは、患部の状態によって巻き方が違うことがあります。

がに股ギプス

大きくがに股に開くタイプのギプス

足をのばすタイプのギプス

足をのばすタイプのギプス

足を伸ばすタイプの方が、股関節に負担がないそうですが、再脱臼しやすいという欠点があります。
実際、うちの娘も伸ばすタイプで固定したあと再脱臼してしまい、がに股タイプでギプスをまき直しました。

問題がないようなら、ギプスを巻いたままで退院します。

その後、通称「ぶかぶか装具」という装具を、数週間~1ヶ月ほど着けて過ごします。

ぶかぶか装具着用

ぶかぶか装具着用

また、その後の治りが悪い場合は、「スコティシュライト」という脚を広げた形にする装具を着けることもあります。
脚を開くことで、テコの原理で大腿骨頭を内側に持っていく装具です。

うちの子も治りが悪かったため、3歳頃に1年間スコティッシュライトをつけました。

スコティッシュライト

スコティッシュライト

7.ソルター骨切り手術

臼蓋形成不全の手術です。

臼蓋形成不全とは、大腿骨の屋根になる部分(臼蓋)がしっかりとアーチ状になっていない状態をいいます。
大腿骨頭の上にアーチがないため、骨頭が外側すべって脱臼しやすくなります。

臼蓋形成不全

臼蓋形成不全。正常な反対側と比べて、臼蓋のアーチが浅くなっている

赤ちゃんの頃に股関節脱臼が治っていても、臼蓋の成長が追いつかず、手術が必要なこともあります。

赤ちゃんから長期で治療している場合、子どもの成長を見ながら5~7歳くらいで手術することが多いです。
また、大きくなってから股関節脱臼が発見された場合も、このソルター骨切り手術を受けることが多いようです。

骨盤の骨に切り込みを入れ、下の部分を押し下げることで、臼蓋をアーチ状にします。

大きな手術なので、全身麻酔で行います。

ソルター手術

ソルター手術

骨盤の骨は、長い医療用のピンで固定します。

ソルター骨切りで骨盤を固定するピン

ソルター骨切りで骨盤を固定するピン

レントゲン写真を見ると大きく切られた骨に驚くかと思いますが、3ヶ月もたてば骨はちゃんとくっつくのでご安心を。

うちの娘は神経ブロックや鎮痛剤がよく効き、手術の後はほとんど痛みを訴えませんでした。

しかし、うちの娘が特殊であり、多くの子は数日間(長くて1週間)痛みを訴えるそうです。
中には泣き叫ぶほど痛がる場合も。

 

この手術では骨盤を切るため、かなりの出血をします。
うちの娘が手術した病院では、手術の1ヶ月ほど前から毎週「貯血」をしました。

貯血というのは、手術中の輸血のために、自己血を事前にためておくことです。
輸血による、病気の感染を防ぐために行います。
うちの娘の場合、1回150mlを4回、計600mlの自己血をとりました。

小さい子どもが1回150mlも血を採るのだから、貧血気味になります。
貧血を回避するため、「インクレミン」という増血剤を飲みます。

手術で余った血は、手術後に点滴で体の中に戻します。
うちの子の場合、300mlを手術中に使用し、残りの300mlを手術後に点滴で戻しました。

 

8.ギプス、装具

ソルター骨切り手術の後は、ギプスを巻きます。

病院によって期間は違いますが、うちの娘の場合はギプス7週間
装具の型どりがてらギプスの上半分を切った状態で2週間でした。

ギプスの上半分を切った後は、座る練習をします。
7週間も寝たきりだったので、筋力が弱って最初はなかなか座ることができません。
でも、さすがは子どもで、数日たてば座ることができるようになります。

ソルター後のギプス

ソルター後のギプス

上半分を切ったギプス

上半分を切ったギプス

赤ちゃんの頃はギプスのまま退院できましたが、ソルター手術をやる子どもは大きく介助も大変なので、ギプスをはずせるまで長期入院になります。(病院によっては、ギプスのまま退院するところも)

小学生以上の子どもは、地元の小学校から転籍し、院内学級で学習することになります。

ギプスを半分切った時に、装具の採寸をし「スコティッシュライト」を作成してもらいます。

スコティッシュライト

スコティッシュライト

病院や子どもの年齢によっては、ギプスをとった後は装具をつけず、松葉杖を使う場合もあります。

うちの子が入院していた病院では、小学生以下はスコティッシュライト、小学生以上は松葉杖でした。

松葉杖は病院のあっせんでレンタルできます。